「子どものために絵本を選んであげたいけれど、どんな絵本を選べばいいかわからない…」そんな声にお応えして、「絵本のプロ」千代田図書館の大塚桂子さんに季節のおすすめ絵本を紹介していただきます。今回は「入園・入学前に読みたい絵本」を伺いました。
絵本で新生活へのイメージを膨らませ、不安を取り除こう
4月は保育園や幼稚園、小学校などそれぞれ新しい生活がスタートするとき。子どもにとっての環境の変化は、大人が考えるそれよりもとても大変な一大事です。そこで、親子で絵本を楽しみながら、子どもがスムーズに新生活に移行できるように準備してみてはいかがでしょうか?
「これまでの生活を卒業し新たなステージに立つ前、子どもたちの小さな胸の中は、未知の世界へのわくわくと、そして不安な気持ちでいっぱいなはずです。どんな生活がこれから始まるのかを想像して楽しみ、不安な気持ちを払ってあげられるような絵本をチョイスすると良いでしょう」と大塚さん。
「入園・入学前に親子で読みたい絵本」として、入園、入学それぞれをテーマにした3冊の絵本をご紹介いただきました。
入園前(3歳〜)の子どもにおすすめの絵本
『コッコさんのともだち』
(作・絵:片山 健/福音館書店/900円+税/発行年月:1991年4月)
保育園でなかなかみんなと遊べないコッコさんは、いつもひとりぼっち。でも、同じようにひとりぼっちでいる子とお友達になってからは、寂しくなくなりました。けれどもある日ケンカをしてしまい…引込み思案ではにかみやのコッコさんは、はたして保育園やお友達になじめるのでしょうか?
<おすすめポイント>
「お友達ができるかな」という入園前に一番不安に思うことがメインテーマなので、まずは安心するために読んでもらいたい一冊。実際に入園した後、どのような経過をたどって友達を作り、園生活に溶け込んでいくのかが丁寧に描かれているので、子どもだけでなく親も新生活の具体的なイメージがつかめて安心できるはずです。
『ぐるんぱのようちえん』
(作:西内 ミナミ 画:堀内 誠一/福音館書店/800円+税/発行年月:1966年12月)
ひとりぼっちで寂しかった大きなぞうのぐるんぱは、仲間に背中を押され、一念発起してビスケット屋やくつ屋など色々な場所で働きますが、いつも大きすぎるものを作ってしまい、失敗ばかり。でも、失敗したはずの物たちを使って開いた幼稚園が大成功し…!寂しかったぐるんぱはどうなったのでしょうか?
<おすすめポイント>
たくさん失敗してしょんぼりしていたぐるんぱが、最後の出会いで生き生きとした姿に変化していく様子は、初めての社会に出ることになる子供に、失敗してもいいんだと勇気を与えてくれます。また、最後にぐるんぱが行きついた幼稚園のなんとも楽しそうな様子を見て、きっと幼稚園に行くのが楽しみになることでしょう。
『こぶたほいくえん』
(作:中川 李枝子 画:山脇 百合子/900円+税/福音館書店/発行年月:2001年3月)
毎日いたずらばかりしているわんぱくなこぶた3匹が、ある日保育園に入ることに。保育園ではしばらくお家の方を見て泣いてばかりの3匹でしたが、お母さんが迎えに来るころには「こぶたほいくえん」が大好きになっていました。一体何があったのでしょうか?
<おすすめポイント>
得意なことを見つけて、それを介して周りとなじんでいく様子がわかりやすく描かれているので、子供も自分と重ね合わせて「こんな遊びができるんだ!」「これなら楽しく1日過ごせそう」と園での生活をイメージしやすい一冊。優しいタッチで可愛く描かれた絵には、入園の時期に咲くお花なども盛り込まれており、季節感も楽しめます。
入学前(6歳)の子どもにおすすめの絵本
『1ねん1くみの1にち』
(写真: 川島 敏生/1600円+税/アリス館/発行年月:2010年8月)
登校から朝の会、授業中や休み時間など、小学校1年生の1日の流れを写真で見られるユニークな絵本。教室の様子以外にも、リアルな子ども達のセリフがたくさん盛り込まれ、まるで本当に学校にいるような疑似体験ができます。
<おすすめポイント>
すべて写真で見ることができるので「どんな場所で、どんな時間に、どんなことをするのか」を、絵や文字よりもさらにダイレクトにイメージできます。1年生で初めて出会うことになる教科書や筆箱などの道具も登場し、お友達との楽しそうな会話も盛り込まれているので、学校に行くのが楽しみになるはず。
あした、がっこうへいくんだよ
(作:ミルドレッド・カントロウィッツ 画:ナンシー・ウィンスロー・パーカー 訳:せた ていじ/1000円+税/評論社/発行年月:1981年9月)
初めて学校に行く日の前夜、期待と不安で胸がいっぱいの男の子。「明日、君、学校へ行くんだよ。でも怖がらなくていいんだ…」とぬいぐるみのクマに話しかけます。どうやら自分をクマに置き換え、励ましているよう。男の子はクマにどんな言葉をかけてあげるのでしょう?
<おすすめポイント>
初登校前日のどきどきする気持ちや心配なことを、ひとつひとつクマに語りかけている様子は、まさに子どもの何となく不安な胸のうちを代弁してくれているかのようで、心の中をすっきりさせてくれます。また、「自分だけじゃなく、みんな同じように不安なんだ」と安心することもできるでしょう。
『くんちゃんのはじめてのがっこう』
(作・絵:ドロシー・マリノ 訳:間崎 ルリ子/950円+税/ペンギン社/発行年月:1982年4月)
くんちゃんが初めて学校に行きます。張り切って登校したくんちゃんですが、上級生の難しい勉強を見て「僕にはできないことばかり…」と教室から逃げ出してしまします。窓から覗いていると、先生が1年生に簡単な質問をしているのが見えて…くんちゃんは教室に戻れるのでしょうか?
<おすすめポイント>
最初は難しい問題に驚いたくんちゃんが、自分たち1年生にもわかる質問をしてくれる先生にホッとし、自信を取り戻す様は、「先生がこわいんじゃないか、授業がむずかしいんじゃないか」という子供の不安を取り除いてくれます。くんちゃんを通してドキドキ感や安心感を臨場感たっぷりに味わい、学校生活への期待が高まるかもしれません。
まとめ
恐怖心や不安感を和らげ、期待や希望を膨らませてくれる絵本との出会いは、子供が気持ちよく新しい生活のスタートを切れるきっかけになります。親子で、子どもの気持ちに寄り添いながら読むことで、安心して新しいステージへの一歩を踏み出せることでしょう。
(文:吉田飛鳥)
(監修:千代田区立千代田図書館)
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